
単純なかたちが一定のルールでつながり、全体を構成するしくみは、人工物、自然現象を問わず現れる普遍的な原理です。美術家の野老朝雄はこの原理を「個と群」と呼び、多様につながる作品群を生み出しています。「個と群」の背後には高次元の幾何学や非線形の数理や対称性などが存在し、美術や音楽などの芸術、建築や宇宙構造物、アルゴリズムやデータ構造、結晶や準結晶の原子配列、タンパク質の折りや自己集合、群れのふるまいなど、さまざまな領域の学問や創造へとつながっています。 東京大学教養学部で開講された授業『個と群』(文理融合ゼミナール)では、学生が野老と本学の舘知宏との協働により「個と群」の創造プロセスを実践しました。創造のプロセスは必ずしもまっすぐには進まず、つくられたものはしばしば意図しない副産物となります。このような副産物を科学、情報、工学、芸術、数学など多様な視点で読み解くことで新たな発見や問いを得ることができます。つくること、発見すること、問いを得ること、その問いを解くことの連鎖は、豊かな学際的研究領域へつながっていきます。 つながるかたち展01 CONNECTING ARTIFACTSでは、かたちをつくることから始まる学術の連鎖を「野老」「個と群」「図法力学」「折紙」の4つの章を通して紹介します。