「アート」と「学び」が接続された実践は、フォーマル・インフォーマルの隔てなく、年々増加していると言ってよいだろう。学校では、「美術・図画工作」「音楽」といった教科に加え、アーティストやプロの表現者を招いた取り組みが珍しいものではなくなりつつある。美術館や劇場では、ワークショップに代表されるプログラムが精力的に展開されている。そのほか、芸術祭や地域のアートプロジェクト、アーティスト・イン・レジデンスの事業などにおいて、アーティストと市民や子どもが出会い、協働するような活動は各所で見られる。
上記いずれにも共通して、実践レベルでは日々新しい試みが探究されているものの、そのプロセスや成果が実証的に検証されることは多くない。それゆえ、それぞれの中でどのような学びが生起しているのか、アートの実践の中で得られるユニークな学びとは何か、それはどの程度のインパクトを持つのか、その学びは何に支えられているのかといったことは、十分に整理されていないと言える。また認知科学研究に関して言えば、創造・鑑賞時の認知過程やメカニズムに関する知見が比較的得られている一方で、アートに関わる学習研究は大きく立ち遅れていると言えるだろう。
このシンポジウムでは、アートを通した学び、アートによる学び、あるいはアートという学びについて、実践的な研究の知見を基にしながら議論するものである。今回は「その1」として、主に学校や大学を舞台にした実践や研究を紹介いただき、「アートと学び」の可能性を探る。